〜いっしょにできること?〜

「さてと、今日も練習を頑張りましょう」
 ―放課後、後者の片隅にあるスタジオへやってきた私、松永いちごはそんなこと言っちゃったりしていつもどおり声の練習です。
 ここには基本的には今みたいに私一人しかいませんけど、昔はあのアサミーナ先輩も、そして今でも片桐里緒菜さんがときどき使ってたりしますから、私もいつかそのかたたちみたいに…って思います。
 あ、といっても、今でも私以外にもここに結構くる人、いたりするんですけどね?
「あによ、ヘッドったらもうきてたの。相変わらず練習?」
「はわっ、えと、副ヘッドさん、こんにちはですぅ。ま、まぁ、そうですよぅ?」
 突然人が入ってきたものですからびくっとなっちゃいましたけど、その人…冴草エリスさんもよくここに現れる人。
 私たちがどうしてああ呼び合ってるかについては…まぁ、色々あったんです。
 副ヘッドさんは別に練習とかしにきたわけじゃないですから、席につくと雑誌でも広げてのんびり…私はちょっと練習を続けますけど、少ししたところで休憩を入れます。
「…そういえば、この学校って戦車道とかしないのかしらね?」
 と、そのタイミングで副ヘッドさんが声をかけてきましたけど…?
「…ふぇっ? 戦車道って…あの戦車道ですか?」
「あによ、その戦車道に決まってるでしょ?」
 あの、とかそれ、とかになっちゃってますけど、まぁ間違いないでしょう。
「う〜ん、あれはさすがにあのアニメの世界の中のお話ですから…ちょっと難しいと思いますぅ」
「そう? この学校って割と何でもありに見えるから、やろうと思えばできそうな気がするんだけど」
 うっ、それを言われると、何だかあってもおかしくない気もしてきました…けど。
「でも、この学校にあったとしても他の学校にはないですから、試合はできないですよぅ?」
「う〜ん、まぁそうか…つまんないの」
「そ、そうですか? 副ヘッドさんは魔法なんてものが使えるんですから、何か撃ったりすることはできそうですけど」
「いやいや、それはちょっと違うでしょ。一つのチームを組んで戦車に乗るのがいいんじゃない」
 確かにそれはそうかもしれません。
「あ〜あ、戦車道があったら、ヘッドと同じチームになってあげてもよかったんだけど…って、別にそんなことは思ってないわよ?」
「…ふぇっ?」
 副ヘッドさんと同じチーム…う〜ん、相手に回しちゃうよりは、そのほうがいいのかもでしょうか。
「…あっ、一緒にっていうなら、スクールアイドルのほうが現実的じゃないですか?」
 と、ふと思ったことを言ってみます。
「スクールアイドル、って…あぁ、あのアニメね? あれも何人かの生徒がチーム組んで頑張るお話よね」
 さすがは副ヘッドさん、そのアニメのことももちろん知ってました。
「でも…ヘッドは自分がアイドルできるほどかわいい、とか思ってるんだ?」
「…ふぇっ? そ、それは…!」
 言われてみればそう受け取られかねない言葉だった気がしちゃって思わず慌てちゃいます。
「そ、それは別に、その、そこまで考えてたわけじゃなくって…あのアニメの皆さんだって、そこまで考えてなかったって思いますし…!」
「ふぅん、でもヘッドってかなさまとアサミーナみたいな歌って踊れる声優を目指したりしてないの?」
「ふぇ、それは…う〜ん、さすがに声優になる、以上のことは考えられませんよぅ?」
 声優とアイドルを兼ねるのは大変なことですし、そもそもどちらかになるのも大変なんですから…。
「でも、まぁ、スクールアイドルをヘッドとする、ってのも悪くない気もするわね…って、二人じゃちょっとさみしい感じがするし、そういうときは夏休みのセブンメンバーとか集めてもいい気もするけどね」
「そ、そうでしょうか?」
 かなさまとアサミーナ先輩も二人ですし、あんまり多くても個々が見えなくなってしょうがない様な…一つのユニットとしてはあのアニメの九人が限度、の気がします。
 でも、そうですね…副ヘッドさんとそういうのをする、っていういのは確かに悪くない気もします。

「それにしましても…いきなり戦車道のことなんか言ってきたりして、副ヘッドさんはあのアニメのこと好きなんですね」
「まぁね、今まで観たアニメの中でも一番とか言ってもいいくらいのものじゃないかしらね?」
 私もあの作品は観てますし、そしてそれくらい言われてもいいくらいの良作だって思ってます。
「そうですか、それはよかったですぅ」
「…って、あによ、そこで安心する理由が解んないんだけど」
 今日は副ヘッドさんがくるか少し不安でしたけど、あれを持ってきておいてよかったです…と、机の下に置いてあったものを彼女へ差し出します。
「えっと、副ヘッドさん、お誕生日おめでとうございます。それはプレゼントですぅ」
「え…た、確かに今日は私の誕生日だけど、わざわざ…。ま、まぁ、別にたいしたものじゃないんでしょうけど、一応お礼言っとくわ…あ、ありがと」
 今日、七月七日は副ヘッドさんのお誕生日だったりしたわけでした。
「それじゃ、今日はこれからケーキでも食べに行きませんか?」
「そうね、夕方までには帰らないといけないけど、じゃあ…って、あのお店はやめておきなさいよね?」
 プレゼントを開けずに持って立ち上がる副ヘッドさん…中は帰ってから見るみたいです。
 一応、あの戦車道アニメのblu-ray初回限定版を全巻揃えておいたんですけど、喜んでもらえるでしょうか…って、副ヘッドさんってblu-rayは観れましたっけ?


    -fin-

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