〜アサミーナとねむねむかなさま〜
「はぁ、はぁ…ふぅ」
―今日のお仕事を終えた私…石川麻美は急いである場所へ向かいます。
それは私が通っていた学校の片隅にある、在学中によく練習で使っていた場所…。
「はぁ、はぁ…っ!」
その場所…上映室隣にあるスタジオへ息を切らせながらも飛び込みますと、そこには一人の女の子の姿…。
「…うにゅ?」
こちらへ視線を向けるのは、とっても見知った子…。
「はぁ、ふぅ…わぁ、よかった、夏梛ちゃん、いた…」
その子は私が大好きな、誰より大切な灯月夏梛ちゃん…その姿を見て、息を切らせながらも微笑んじゃいます。
「麻美…どうかどうかしたんですか?」
私の様子を見て、あの子は少し首をかしげちゃいます。
「はぁ、ふぅ…う、うん、昨日も夏梛ちゃんここにきてたのに、私のお仕事が長引いたせいで会えなかったからさみしいな、って…」
昨日、それに今日も私にお仕事があって夏梛ちゃんはお休み、という珍しいことになっていました…うん、たまには夏梛ちゃんにもゆっくりしてもらわなきゃ、です。
「それで、今日もここにいるってことだったから、ちょっと急いできてみたの」
ようやく息も整ってきましたけれど、ちょっと疲れました…でも、こうして夏梛ちゃんに会えましたからその疲れも飛んでいっちゃいましたけれども。
「大丈夫大丈夫です…気にしてなんていませんから」
「う、うん、でもやっぱり、私がとってもさみしかったから…うぅ、夏梛ちゃんくらいちゃんと実力があれば、お仕事もきちんと終わらせられたのに…」
昨日は本当でしたらもっとはやくお仕事が終わる予定だったんですけれど…あぅ。
「いえ、そんなことは…麻美もいっぱいいっぱい頑張ってますから」
「ううん、そんな、私なんてまだまだ…夏梛ちゃんとこれからも一緒にお仕事できる様にもっと頑張らなきゃ」
ユニットのほうも、夏梛ちゃんの足を引っ張ることがない様にしないと、なくなったりしちゃうかもですから…。
「私も麻美と一緒一緒がいいです」
「わぁ…うん、夏梛ちゃん。だから、私、もっと頑張るねっ」
私の言葉にあの子は微笑んでくれて…うん、もっと頑張ろっ。
「…あれっ?」
気分も落ち着いたところで…夏梛ちゃんの姿にちょっと違和感を覚えました。
「…麻美?」
「夏梛ちゃん…その服装って?」
今日の彼女、いつものゴスいおよーふく姿じゃなかったんです。
「服…服…?」
「うん、私がここに通ってた頃に着てた制服…」
しかもちょっと大きいサイズのものを着てるみたい…と、そんな彼女を見てまた別のことに気がつきます。
「…って、夏梛ちゃん? 何だか眠そうだよ?」
隣に座らせてもらってよく見るけど…かなりうとうとしてます?
「はい…えっと、寝てないです寝てないです…」
「…じぃ〜っ」
しかも何だか寝ぼけたみたいになっていますし、ちょっと見つめてみたりして…。
「夏梛ちゃん…もしかして、疲れたりしてるの?」
そして、そんな結論に至りました。
「そんなそんなこと、ないです…」
そんなこと言う彼女ですけど、ぼ〜っとしちゃってます。
「う〜ん、そうなの? 夏梛ちゃん、私のいないところで無理したりしてないか、心配になっちゃう…」
夏梛ちゃんは私よりずっとお仕事多いですし、それに頑張りやさんですから。
「はぅ、麻美は心配心配しすぎです…」
「もう、夏梛ちゃんのことなんだから、心配になるに決まってるよ?」
大好きな人のことなんですから、当たり前ですよね。
「うん、だから夏梛ちゃんは無理しないでお休みしたほうがいいのかな…とっても眠そうだし」
「眠くなんてありませんにょ…?」
「もう、どうして眠いことを隠そうとするの?」
そんな彼女がかわいくって、ついなでなでしちゃいます。
「うぅ…こどもみたいだからです…」
と、夏梛ちゃん、少し恥ずかしそうにそんなこと言います…?
「もう、そんな…うふふっ、そんなこと気にする夏梛ちゃんもかわいい」
ますますなでなでしちゃいます。
「か、かわいくなんかないです…ないです」
ぷいってされちゃいましたけれど、その仕草もまたやっぱり…。
「ううん、夏梛ちゃんはとってもかわいいんだから」
「麻美のほうが…絶対に…のに」
夏梛ちゃん、何か小声でつぶやきました?
「…えっ、夏梛ちゃん、今何て…? 私のこと、言おうとしたみたいだけど…」
「別に別に何でもないないです!」
あんなに慌てられると、かえって怪しいですよね。
「…もう、本当に? 私に隠し事…しちゃ、いやだよ?」
すぐ隣にいるあの子のこと、じぃ〜っと見つめてみます。
「麻美のほうがかわいいかわいいって言っただけですっ!」
「…わっ、か、夏梛ちゃんっ?」
赤くなった彼女の言葉にこちらが慌てそうになっちゃいます…けど。
「もう、そんな、何度も言ってるけど、夏梛ちゃんのほうがずっと…その制服姿もとってもかわいいのに、そんなこと言って…」
「…むぅ、私は小さい小さいですし」
「もう、制服が似合ってることとは関係ないと思うんだけど…」
確かに今の彼女が着てる制服はサイズが大きめなんですけど、それはそれでかわいいんです。
「それに、夏梛ちゃんは夏梛ちゃんだから誰よりもかわいいのっ」
もう、思わずぎゅっとしちゃいます。
「はぅ…これ、麻美の制服ですし…」
「…え、あれっ?」
と、意外な言葉に身体を離して改めて彼女のことを見てみます。
「サイズが大きかったのって、そういう…でも、どうしてそれを夏梛ちゃんが持ってて、しかも着てるの?」
「そ、それはそのその…」
恥ずかしそうにするあの子だけど…うん、私のものを着たりしてくれるなんて、何だか嬉しいかも。
「…麻美」
と、そんなことを思っていると、あの子が私のことを見つめてきます?
「えっ、夏梛ちゃん、どうしたの?」
あの子は何も答えず、さらに見つめてきちゃいます。
「え、えと、本当にどうしたの…?」
「麻美…す…」
「え…夏梛ちゃ…」
真っ赤に顔を染めたあの子の言葉に胸が高鳴っちゃいます…と。
「……あ、寝てました」
「…え? もう、夏梛ちゃんったら…」
やっぱり疲れてるみたい…だけど、じゃあさっきのは寝言だったのかな…?
「麻美…好きですよ」
「…え、か、夏梛ちゃ…」
今のは…はっきり聞こえましたし、寝言でもないですよね…!
「うん…うん、私も、私も夏梛ちゃんのこと、大好きだよっ」
あの子から想いを口にしてくれたことがとっても嬉しくって…ぎゅって抱きついちゃいます。
そんな私に彼女からも身体を寄せてくれて、さらにすりすりしてきちゃったりして…かわいすぎます。
「夏梛ちゃん…このまま、お仕事でも、それに恋人としても、ずっとずっと、一緒にいたいね」
大好きって気持ちがどんどんあふれてきて、さらにぎゅってしちゃいます。
「当たり前です…愛してますから…」
夏梛ちゃんもそう言ってくれて、さらに身を寄せてきますけれど…よく見ると、眠っちゃってます?
「うん、夏梛ちゃん…ずっと、そばにいるから。だから、今はのんびりお休みして、大丈夫だよ」
そんな彼女のことをやさしく抱きとめて、なでなでしながら寝顔を見守るのでした。
-fin-
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