〜あまくてほしくてとろける…〜

「う〜ん、どうしようかしらね…」
 神社の境内の掃除を一人しながら、あたし…雪乃ティナは悩んでた。
 理由は、昨日この場であったこと…。

 ―最近、あたしの大切な人の様子がおかしかった。
 明らかに何か隠してて、それが何なのか言ってくれない…しかもこっそり一人でどっかに出かけたりする。
 それが何だかさみしくって、もしかしたら嫌われたんじゃないか、なんて思ったりもしちゃった。
 でも…昨日、あたしの様子があんまりにもひどいから、何をしてたのか閃那から言ってくれた。
 あたしに内緒で、明日のチョコレートを作って、あたしを驚かそうってしようとしてたそうなの。
 明日は二月十四日、好きな人にチョコレートをあげるって習慣のある日。
 …あぁ、閃那はあたしと同じことをしてたんだ。
 あたしも、十二月二十五日…閃那の誕生日に、驚かせようと思ってこっそりケーキを作ったりして…。
 そんなことしてくれた閃那を疑ったりするなんて、ちょっと自分が情けないわ。

 ―で。
 その閃那にあたしからもチョコレートを贈ろうって考えてるんだけど。
「甘いの、ねぇ…」
 昨日、閃那にお返しは飛びきり甘いのをお願い、って言われたのよね。
 確かに閃那は甘いもの好きだけど、ああ言われると…満足してもらえるのを用意しなきゃ申し訳ないわ。
 手作りにしたいけど、あたしの腕でできるかどうか…時間もないし、ねころ姉さんに手伝ってもらいたいかもだけど、ヘキサさんに取られちゃったものね…。
 ま、一人で頑張ってみるしかないわよね。
「相変わらず頑張ってるわね、感心感心」
 と、境内に姿を見せたのは冴草エリスさん。
 今はまだ背も低めで年齢も中等部ってとこなんだけど、将来は閃那の母親になる人だ。
 …閃那の母親、か。
「えっと、エリスさんにちょっと相談したいことがあるんだけど…」
「あによ、いきなり。まぁ、いいけど…どうしたの?」
「いや、その…昨日、閃那が一足先に…」
 ちょっと恥ずかしいけど、昨日あったことを説明する。
 もちろん、昨日した別のもっと大きな、閃那にも忘れてもらった失敗はあまりにも恥ずかしすぎるから言わないんだけど。
「ふぅん、要するに閃那のチョコのお返しにとびきり甘いのをお願いされたけど、どんなのがいいか解らない…と、そういうこと?」
「ま、まぁ、そうなるわね…」
 閃那の母親になる人なんだから、いいアイデアとかくれるかもしれないわよね。
 …同じ母親になる人でも、叡那さんじゃこういう相談はできないけど。
「お返しっていったらホワイトデーになる気もするけど、まぁいいわ。明日のほうが雰囲気あるし、貰うほうもそのほうが嬉しいものね」
「は、はぁ…」
 ちょっとよく解んないわ…エリスさんも閃那も、ついでにヘキサさんも、意外と乙女なのよね。
「でも、閃那がどんなのほしがってるのか、本当に解らないの?」
「え、えっと…とりあえず、甘いチョコでしょ?」
「はぁ、そういえばティナって結構かたいとこあるし、しょうがないかしら」
 あ、あによ、ため息つかれたんだけど。
「しょうがないから、私が教えてあげるわよ。絶対喜ぶと思うから、耳を貸しなさい」

 ―二月十四日。
 この日は夕方まで閃那は学園のカフェテリアでアルバイトしてる。
 正直、あたしとしてはあんまり人前に出てもらいたくないんだけど…とにかく、閃那よりはやく部屋に戻って準備を済ませる。
 …でも、こんなこと、ほんとにやんの?
 あたし、エリスさんにからかわれてるんじゃ…当のエリスさんは叡那さんに今日こんなことしてるとは思えないし。
 こんなことして、呆れられたら…嫌われたらどうしよう…。
 不安になりながら待ってると、部屋の扉が開いて閃那が帰ってきた。
「ただいま、ティナさ…えっ?」
「お、おかえり、閃那。え、えと…」
 扉を閉じた閃那が固まったわ…。
「きょ、今日のプレゼント…よ、よかったら、受け取りなさい…よねっ!」
 こっちも真っ赤になってるのが解る。
 だって、自分の身体にリボンつけて、あたしがプレゼント…なんて…。
 一方の閃那は固まったまま…や、やっぱ引かれたわよね。
「え、えっと、閃那…」
「…ティナさんっ!」
「えっ…うわっ?」
 いきなり思いっきり飛びつかれて、あたしはベッドに倒れこんじゃった。
「とってもおいしそうです…さっそくいただいちゃって、いいんですよね?」
「えっ、せ、閃那…!」

「ティナさん…とっても甘いです」
「う、うっさい…!」
 よ、喜んでもらえたから、よかった…の?


    -fin-

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