晴れて部員になった私、これで心置きなく毎日部室へきちゃう…なんて、それは部員にならなくってもしちゃうけれど。
もう一人の部員である幸菜ちゃんは私のデッサンも終えて、一日で図面も仕上げていよいよ実作業へ移る。
「私も何か手伝う?」
「あ、いえ、雪野先輩は何もしないで…というより、近づかないでくれるとありがたいです」
一緒に何かできたら…と思ったのに、そんなお返事。
「そんな、私、幸菜ちゃんの力になりたいのに…」
「も、もう、その、そんなショック受けないでください! そういう意味じゃありませんから!」
「あら、それならどういう意味なの?」
「えと、これから作るものは先輩をモデルにしたものですし、それに…とにかく、できあがるまでは見ないでほしいんです」
それに…の続きがちょっと気になっちゃうけれど。
「つまり、できあがるまでのお楽しみ、ということね?」
「はい、そういうことです」
そう言われちゃったらそうするしかなくって、私は少し離れたところから見守ることにするの。
「あの〜、先輩も何か他のことしたほうが…見ているだけじゃ、つまらなくないですか?」
作業をはじめようとしたあの子がそんなこと言ってきた。
「いいえ、そんなことないし、私のことは気にしなくていいわよ?」
「そ、そうですか? 先輩がそう言うなら…」
ちょっと遠慮がちながら作業をはじめる彼女。
まぁ、何かをするっていっても、何をしたらいいか解らない、っていうところもあったりして…そこは、あの子の作ってるものが完成した後で色々教えてもらいたいわね。
あの子が作業をはじめてから、私はちょっと離れてその見学。
あの子はつまらなくないか、と心配してくれたけれど、そんなことはない。
「頑張って作業してる幸菜ちゃんもかわいいわね…」
もう、それだけで飽きずにずっと見ていられるわ。
「はい、そうですよね…それでいてマスターも認める実力ですし、すごい子です」
そんな私の隣に立って相槌を打ってきたのは、私より少し年下に見える、メイドさんの服を着た女の子。
「うふふっ、やっぱりメルアさんも幸菜ちゃんはかわいいって思うわよね。あ、でも貴女もかわいいわよ?」
「あ〜う〜、もう、何言ってるんですかぁ」
ちょっと照れちゃったその人はメルアさんといって、この間あの子が話してた助手さん。
ここの顧問はあの子が言ってたとおり永折美紗さんという先生なのだけれど、どこかで聞き覚えのある名前かと思ったら、先日実際にお会いしてすぐにどういうことか解ったわ…学校へきてすぐに紹介された、アヤフィールさんの恋人さんだったの。
その永折先生の妹さんの由貴さんも助手さんをしているのだけれど、他にもメルアさんとか数人が助手としてついていて…メルアさんたちは普通の人間にしか見えないものの、永折先生が作ったアンドロイドという話もある。
「でも、幸菜ちゃんは本当に頑張りやさんで、マスターもいつもほめてます…うん、メルアももっとほめてもらえる様に頑張ります」
そう言って幸菜ちゃんのお手伝いへ行くメルアさんだけど、大丈夫かしら…彼女、結構ドジなところがあるみたいなの。
でも、彼女の言っていたとおり、幸菜ちゃんが先生からほめられるほど頑張りやさんなのは確か。
今だって、作業に集中して油まみれになっても気にしていないし、そして遠目から見ていても何かが作られていっているのが解る。
あの子は好きだからあそこまでできるのだって思うけれど、それでもやっぱりえらいわよね。
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