「うふふっ、こんにちは、幸菜ちゃん」
「あっ、雪野先輩、こんにちは」
 あれから毎日、放課後には部室のほうへ顔を出してる。
「…って、わわっ、だ、抱きつかないでくださいっ」
「しょうがないじゃない、だって幸菜ちゃんがこんなにかわいいのだもの」
「うぅ、だから私はそんなことないのに…」
 相変わらず恥ずかしそうにする彼女はとってもかわいい…こうして毎日ここにくるのも、もちろん彼女を愛でるため。
 こうしてここで会える、っていうことが解ったから、放課後までは会いたいって気持ちを何とか抑えることができる様になったの。
 だから、その分ここで思いっきり愛でちゃいたい…ところなのだけれど。
「ふふっ、幸菜ちゃん、今日は何をするのかしら?」
 あの子は部活をするためにここにきているのだから、あまり邪魔をしてはいけない…ゆっくり身体を離して微笑んであげる。
「あっ、はい、その、今日もモデルをお願いしていいですか…? えと、もうすぐ描き上がりますから」
「ええ、もちろん」
 私をモデルにアンドロイドを作る、っていうことで私のこと描いてくれてるの。
 図面に近いものらしいけれど、それでもあの子が私のこと描いてくれているのだもの…うふふっ、とっても嬉しい。
「…あ、あの、雪野先輩?」
 椅子へ腰掛けた私のことを描きはじめた彼女なのだけれど、しばらくしたところで声をかけてきた。
 あら、珍しいわね…普段なら一度作業に入ると集中して黙っちゃうのに。
「ええ、どうかしたの?」
「えと…もうすぐ絵が完成するんですけど、雪野先輩は明日からはどうされるんですか?」
「どうする、って…そんなの変わらないわよ? ここにきて、幸菜ちゃんに会いたいわ」
「でも、私に会うためだけにそんな…。雪野先輩、部活には入らないんですか?」
 だけ、って…それが一番重要なことなのに、解ってくれていないのかしら。
「先輩、勉強も運動もできるみたいですから、何かに入ったほうがいいんじゃ…」
「…あら、私の成績についてなんて、よく知っているわね」
「はぅっ、そ、それは、風の噂で耳にしたといいますか…!」
 あたふたしちゃうあの子だけど、これって…わざわざ調べた、ということなのかしら。
 幸菜ちゃん、こんなこと聞いたりそんなこと調べたりするなんて…ふふっ。
「と、とにかく、そういうことですから…!」
「…そうね、では私も部活に入ろうかしら」
「え…あ、は、はい、そうです、そうしたほうがいいです…」
 私の一言にあの子はとってもさみしげになっちゃったりして…ふふっ、かわいいんだから。
「ええ、それで少し聞きたいのだけれど、高等部の生徒が中等部の子と同じ部活に入ることって、できるのかしら?」
「え〜と、どうでしょう…規模の小さなところとか、特殊なことをしているところとかなら、ありそうですけど…」
 となると…ええ、問題なさそう。
「じゃあこれからよろしくね、幸菜ちゃん」
「…ふぇ? よろしくって、何がです?」
 全く意味が解らなかったみたいできょとんとされちゃった。
「ええ、私、この科学部へ入ることにしたから。だから同じ部活よね…よろしくね」
「え…えぇ〜っ!? そ、それ、本気なんですかっ?」
 今度はものすごく驚かれちゃった。
「ええ、日本文化を研究する部活があればそっちでもよかったのだけれど…やっぱり、幸菜ちゃんと同じがいいもの」
「そ、そんな理由で…そ、そもそも科学に興味あるんですか?」
「ええ、もちろん。幸菜ちゃんが好きなものだもの」
 それに、もし部活に入るならここ、っていうことは、ここの部員が彼女一人だけ、って聞いたときから決めていたこと。
 彼女への想いは別にしても、一人でさみしい思いなんてさせておけないわ。
「幸菜ちゃん…いいかしら?」
「そ、そんなの、私に決める権利ないですし…先輩がそうしたいんでしたら…」
「…わぁ、ありがとっ」
 嬉しくなっちゃって、思わず立ち上がると彼女へ駆け寄って、そのまま抱きしめちゃう。
「わぷっ、わわっ、そ、そこまで喜ばなくっても…!」
「だって、嬉しいものは嬉しいんだもの」
 うんうん、幸菜ちゃんも口ではああ言っていても嬉しそうよね。


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