幸菜ちゃんが作った、私そっくりのアンドロイド…起動はとりあえずいずれ、っていうことになって、それにもうすぐある学園祭への出展もやめておくことになったけれど、彼女がここまで頑張ってきたのは事実。
 それに、これは私のことを想って作ってくれたみたいだし…ええ、間に合ってよかった。
「ね、幸菜ちゃんにプレゼントがあるの」
 そう声をかけながら、荷物から用意してきたものを取り出す。
「えっ、な、何です、突然」
「ええ、これ…幸菜ちゃんのために作ってみたの」
 唐突な言葉に戸惑う彼女に私はそれを差し出して、あの子は少し戸惑いながらも受け取ってくれた。
「え〜と、これ…わっ、着物ですか? これを、先輩が…?」
「ええ…あ、でも小物は時間がなかったから買ってきたものだけれど、ね」
 母国にいた頃から日本に憧れてて、自分で着物を作れちゃうくらいになってたの。
「いつかは私の理想の大和撫子に…って思っていたのだけれど、今こうしてここに夢が叶って嬉しいわ」
 うんうん、あの頃は夢で終わるかと思っていたのに…とっても幸せ。
「そ、そんな…でも、悪いです」
 でもまずはやっぱり遠慮されちゃったりして、そういうところもまた大和撫子よね。
「いいのよ、これには頑張った後輩へのご褒美、という意味もあるのだから」
「ご褒美、ですか?」
「そう、幸菜ちゃん、その子を作るためにとっても頑張っていたでしょう? だから、それに対する…ね?」
「えっ、そんな、それこそもったいないです…! これを作ったのって、あくまで私が好きでしたことですし…!」
 う〜ん、こういう理由なら素直に受け取ってもらえると思ったのに、逆効果だったみたい。
 こうなったら…もっと直接的に伝えるしかないわね。
「もう、大好きな人へ贈り物をしたい、って思うのはごく自然なことでしょう? だから、そんな遠慮なんてしないで…これで断られちゃったらかえって悲しいわ」
「あ、あぅ、でも、こんなすごいもの受け取ったら、本気にしちゃうじゃないですか…」
 顔を赤らめた彼女、そんなことを言うけれど…えっ?
「本気って、どういうこと?」
「雪野先輩が、私のこと好き、って言ってくれること…お世辞だって解ってるのに」
「…え?」
 彼女の言ったことが理解できず、一瞬固まっちゃった…けど。
「ちょっと、幸菜ちゃん、それって…私が貴女のことを好き、って言っているのが冗談か何か、と思っていたの?」
「は…はい」
 うそ、この想いが通じていなかったなんて…信じられない。
「ど、どうして?」
「だって、そんな気軽に好きと言ったりスキンシップを取ったりするのって、外国の人だと普通のコミュニケーション、なんですよね? だから、きっと他の子にも同じことしてるんじゃ…」
 がーん、そんな、想いを伝えるための行動が逆に受け取られていたなんて、ショック…。
 私の行動、文化の違いとして受け取られちゃってたのね…確かに文化の違いの様に見えて、私もまだまだ日本文化を理解しきれていなかったみたい…。
「もう、そんなはずないでしょう? 私は他の子にはそんなこと言ったりしないし、だいたい他の子と同じなら毎日ここへきたりなんてしないわ」
「はぅっ、も、もう、そんなこと言われたら本気にしちゃうじゃないですか…!」
 真っ赤になりながらも首を横へ振ったりして…本気にしてもいいのに。
 こうなったら、私がいかに本気なのかを伝えて、彼女にも本気になってもらうしかないわね。
「幸菜ちゃんは私にとって理想の大和撫子で、一目惚れだったの。それは今も同じ…いいえ、貴女のことを知るたびにその想いはもっと大きくなってきているわ」
「う、嘘ですっ。雪野先輩みたいな素敵な人が、私みたいな子のことなんて好きになるはず…」
 う〜ん、幸菜ちゃん、自分に対する自身のなさから私の想いも信じられなくなっているのかしら…。
「もう、しょうがない子ね…私の目を見て? 嘘をついている様に見えるかしら?」
 じぃ〜っと彼女のことを見つめる。
「はぅ、え、えと…」
 とっても恥ずかしそうにしながらも、私のことを見てくれる彼女。
 ふぅ、さすがにちょっと緊張しちゃう…けど。
「私は、幸菜ちゃんのことが好き…誰よりも、愛しているの」
 これ以上ないほどのはっきりした表現で想いを伝えると、あの子はますます赤くなっちゃう。
「幸菜ちゃんは…私のこと、どう思ってる?」
「わ、私は…雪野先輩のことは、変わった人だなって感じてて…」
 じぃっと見つめたままの私に、あの子はそんなこと言ってきた…もう、どこが変わってるのかしら。
「でも、先輩と一緒にいるのは嫌じゃなくって…いえ、むしろ何だか嬉しくて…」
 うんうん…やさしくうなずきながら聞いてあげる。
「いつの間にか、先輩のこと…好きになっていたんです」
 あ…ついに、ちゃんと言ってくれた。
「その…先輩は、本気で私のこと、好きなんですか?」
「…何言ってるの、当たり前でしょ」
 もう我慢できない…目の前のあの子のこと、ぎゅってしちゃう。
「わぷっ、はわわ、先輩…?」
「うふふっ、これで私と幸菜ちゃんは恋人同士ねっ」
「は、はわっ、ど、どうしてそうなるんですっ?」
「あら、私は幸菜ちゃんのことが好きで、幸菜ちゃんは私のことが好き…なら、恋人になって当然じゃない?」
「そ、それは…でも、私なんかで本当にいいんですか…?」
 もう、まだあんなこと言ってる。
「…幸菜ちゃん、ちょっと目を閉じて?」
「え、えと…はい、こうですか?」
 こういうところは素直で目を閉じてくれるあの子…かわいいんだから。
「ええ、よろしい…んっ」
 そんな彼女に満足してうなずいて…そのまま、あつい口づけを交わしちゃう。
 私のあふれる想いを、全て伝えられる様に…。


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