第五章

 ―私にとって久し振りになる夏休みの旅行。
 行き先は国内でも海外でもなくって、異世界…魔界といわれる世界でした。
 いかに私の通う学校がお嬢さま学校といえど、そんなところへ旅行へ行ったのは後にも先にも私だけでしょう…けれど、お土産話は聞かせられそうにありません。
「はぅ、副ヘッドさん、目的地にはまだ着かないんですか?」
「まだまだ、だいぶ先ね? でも、いいかげんもう慣れてきたでしょ?」
「そ、それはまぁ、そうですけど…」
 そんな会話を交わす私たちは、異世界のどんよりとした空を飛行中…こんなこと話しても、信じてもらえそうにありません。
 それに、副ヘッドさんは翼で飛んでましたり、人間じゃないとか、こんなこともあまり言いたくありませんよね…って、ちょっと気になることが出てきました。
「えと、そういえば、副ヘッドさんたちは自分たちのことを悪魔、って呼んでるんですか?」
「あによ、いきなり」
 首を傾げられちゃいましたけど、自分たちのことを悪とかいうのって何だか違和感ありますよね。
「ま、いいけど、私たちは種族については魔族、って呼称を使ってるわね」
「そうなんですか…じゃあ、これからは私もそっちで呼んだほうがよさそうですね」
「って、あ、あによっ、気をつかってるつもりなら別にそんなことしなくっても…!」
「いえ、私がそうしたいからそうするだけですよぅ?」
「ふ、ふんっ、なら好きにすればいいじゃないっ」
 照れた様子になるのが、こうして腕にしがみついてちょっと見上げるとよく見えて…って、そんな彼女の顔を間近で見てたら何だかどきどきしてきちゃいました。
 はぅ、どうして私が照れたみたいになっちゃってるんでしょう…!


    …つづく?

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