ということで、お互いに自己紹介…まずは燈星学園の皆さんからしてくださることになった。
「えっと、先ほどもご挨拶をいたしましたけれど、改めて…鴬谷菖蒲です。バンドではウッドベースを担当しております」
 まずは鴬谷さんだけれど、いきなり確かに本格的なバンドっぽいわね…。
「あの、その、東雲叶ですっ。楽器はお琴とか、そういったものしかできませんけれど、よろしくお願いしますっ」
 次に挨拶をしたのはちょっと古風な印象を受けた子だったのだけれど、それは間違っていなかったみたい。
 けれど、そういう独特な楽器が入っているのも悪くないかもしれないわね。
「陽南環です。私はマスタリング担当ですから裏方になりますけど、色々楽しみにしてます」
 裏方のかたまでいるというのは心強いけれど、色々って何かしら。
「鳳玲、ギター担当だよ、よろしくね」
 美月さんは一応まだ明翠女学園扱いなので、最後は中性的な容姿をされた人…確かにギターをしていそうな、何というか絵になる雰囲気があるわね。
 と、次はこちらの自己紹介か。
「草鹿彩菜、この学園の高等部生徒会長をしているわ、よろしく」
 まずは私から…特に付け加えることがない。
「白波美月ですわ。楽器はドラムができますわ」
 …って、まさかドラムとくるとは意外で、私も南雲さんたちも少し驚いてしまった。
 でも、本来の美月さんならそう意外でもないのかしら。
「南雲優子だよ。音楽は聴く専門なんだけど、とにかくよろしくね」
 まぁ彼女はそんなところだと思ったのだけれど、大丈夫なのかしら…演奏は全て燈星学園のかたがたに頼ることになりそうな気がするわ。
「ラティーナ・ヴァルアーニャデース。楽器は一応ピアノとバイオリンのレッスンは受けてマシター」
 そういえば、ラティーナさんはあのアヤフィール先生の養女で、しかもかなりの名家らしい…普段の様子からはあまり想像できないけれど、そのくらいはできておかしくないわね。
 燈星学園の皆さんに担当がいらっしゃらなければピアノ、そうでないならばバイオリンをしてもらえればよいわね…と、なぜかここで自己紹介が止まってしまった?
 不思議になって長机の一番端へ目をやると、小さな女の子がさらに小さくなって、顔も見えないくらいにうつむいてしまっていた。
 どうしたのかしら…そういえば、燈星学園の皆さんがいらしてから、彼女は何もしゃべっていないわ。
 普段の彼女ならばまず間違いなく空気も読まず黄色い声をあげるであろう場面もあったと思うのに、これは体調を崩してしまわれたのかしら。
「一番端に座っているのは藤枝美紗さんで…」
 そういうことならばはやく会合を終わらせてあげなければならないから私から名前を言った…のだけれど。
「わっ、わわわ〜、ダメだよ〜っ!」
 ばっと顔を上げた藤枝さんは大声をあげながら席を立ち、そのまま逃げる様に生徒会室を出ていってしまった。
 どういうことなのか解らず呆然としてしまうけれど…藤枝さん、泣いていなかった?
「えっ、今の子って…」
 場の全体が呆然としてしまう中、鴬谷さんがそうつぶやいたかと思うと、はっとした表情をして立ち上がったの。
「あの、私、あの子に会ってきます…皆さんはお先に帰ってくださって大丈夫ですから…!」
 そして、そう言ったかと思うと彼女もまた部屋を飛び出していってしまったの。

 結局、しばらくたっても二人は戻ってこなかったので、その日の会合は終わりにして解散することになった。
「あーやちゃ…菖蒲さんと美紗さん、どうされたのでしょう…?」
「解らないわ…」
 私と美月さんは二人、とある場所へ向かうのだけれど、やっぱり二人のことは気になる。
 何事もなければ、よいのだけれど…。


    -fin-

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