美月さんと一緒に、彼女の部屋のお風呂へ入る…。
私の部屋もそうなのだけれども、個室である美月さんの部屋のお風呂は狭くって、そこへ一糸まとわぬ姿でお互いに入るのだから、とても…もしかするとこれまでで一番かもしれないほどに緊張してしまった。
だから彼女のほうなどとても見ることができなかったし、思わずのぼせそうにもなってしまった。
一方の彼女は変わらぬ様子で私の背中を流してくれたりしたけれども、ちょっと夢心地ね…。
「え、えっと、美月さん、ありがとう…その、おかしくないかしら」
お風呂から上がっても私はまだ顔を赤くしてしまっていて、そんなことをたずねるのだけれど…それは、美月さんから借りたパジャマを着ているから。
「そんなことないよ、とってもよく似合っとるって」
しかも、笑顔でそう言ってくれる彼女と同じ柄のものなのだから、さらにどきどきしてしまう。
「それじゃ、今日は色々疲れたやろし、そろそろ休もっか」
「そうね」
普段でももう休んでいる時間だし…と、そういえば、当たり前のことだけれどここにはベッドが一つしかない。
「では、布団はあるかしら…私は床で休むから」
「もう、あやちゃん、そんなことさせると思っとるん? 一緒にお休みしよ?」
えっ、一緒にって…つまり、そういうことよね?
「それとも、あやちゃんは…うちと一緒に寝るの、いや?」
「そ、そんなことはないわ、むしろとっても嬉しい…」
「うん、よかった…それじゃ、そうしよ?」
ということで、部屋の明かりを消して…私と美月さんは、一緒の布団の中へ入った。
シングルベッドだからやっぱりそれほど大きくなくって、二人で入るとお互いの身体が密着するほど…。
「あったかいな、あやちゃん」
「え、ええ、そうね…」
あたたかいどころか、暑いくらいよ…。
こんなに身体が近いと胸のどきどきも大きくなってしまうけれど、何とか落ち着かないと…。
「…あやちゃん」
「…ど、どうしたの?」
すぐ隣、吐息が当たるほど近くに美月さんの顔があって…なかなかそちらを向けない。
「今日は…ありがとな」
「…えっ?」
「こうやってあやちゃんとまた一緒に過ごせて、想いも通じて…こうしていられるんが、ほんまに夢みたいで、だから、ありがとな」
「そんな、それはこちらの台詞よ…ありがとう、美月さん」
「うん…」
本当に、私がここまで幸せな気持ちになれるなんて、つい今朝までは夢にも思わなかった。
でも…それだけに、不安にもなってしまう。
「美月さん…私、貴女と幸せになっても、いいのよね…?」
つい、不安が口に出てしまう。
だって、私は…妹に対して何もできず、母に対しては最後まであの様な態度を取り続けてしまった…。
そんな私が誰かと幸せになるなんて、本当にいいのか…。
「…あやちゃん、こっち向いて?」
痛む心…彼女のやさしい口調に少し軽くなって、身体を彼女へ向けた。
「あやちゃんは、うちのこと…好き?」
すぐ間近で見つめてくる、美月さん…。
「も、もちろん…愛して、いるわ」
「うん、うちもあやちゃんのこと、愛してる…だから、どんな不安も、一人で抱え込まんでもええんやから。つらいことも、嬉しいことも、みんな二人で分かち合っていこ、な?」
その言葉とともに、美月さんは私の身体をすっと抱き寄せた。
何があっても、私と美月さん、二人で…もう、ただ幸せだというだけでは、言い表せられない。
身体も、それに心も彼女のぬくもりに包まれて…自然と、涙があふれてしまう。
「あやちゃん…一緒に、幸せになろな…?」
私を見つめる彼女…すっと涙をぬぐうと唇を重ねてきて、私もそれを受け入れる。
ありがとう、美月さん…私たち、これから何があっても、一緒にいましょうね…?
そう、ずっと…。
-fin-
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