私の胸の内の、秘めたる想い。
毎日美月さんと会って、一緒に過ごして…その想いは募る一方で、抑え続けるのがとってもつらくなってきてしまうの。
「あやちゃん、また明日なっ」
「え、ええ、さようなら…」
夕焼けの中、石段を下り終えたところで別れる私たち…帰っていく彼女の背中を見送る私の胸は、もう限界。
「…明日、この想いを伝えよう」
これまでこうやって一緒に過ごしてきたのだから、想いが通じるかもしれない…美月さんも、私を好きでいてくれているかもしれない。
そんなふうに思えたこともあって、私はついにそう決心したの。
高鳴る胸を抑えつつ、放課後にあの神社へ向かい、まだきていなかった彼女を待つ…。
でも、その日…日が暮れるまで待っても、彼女は現れなかったの。
彼女がこなかったのは、それがはじめてのこと…。
「…う、ううん、たまたまよ」
逆に、今まで毎日、明確な約束もしていないのに会えていたのが不思議なくらいだったのよ。
そう、今日は用事か何かでこられなくって、明日になったら会える…そう心に言い聞かせ、その日はその場を後にした。
でも…次の日も、また次の日も、彼女が姿を見せることはなかった。
さらに次の日も、私以外に神社へ姿を見せる人はいなくって…寒さに震えながら、ある結論に達するしかなかった。
「私…嫌われてしまった、のね…」
もしかすると、私が恋心を抱いていることが気付かれてしまって、それで…それが受け入れられなかったのかもしれない。
いずれにしても、私があの子に会うことは、もうできなさそう…。
毎日会えたことに満足をして彼女の住所など全く聞いていなかったけれど、これは…きてもらいたくない、ということだったのかもしれないわね…。
「くっ…う、うぅっ…」
誰もいない社で一人、告白することすらできなかった初恋が破れたことに、泣き崩れてしまった…。
―それから。
抜け殻になった私は学校へも行かず、ずっと部屋にこもりきりとなってしまった。
今思えばそんな私を心配してのことだったのでしょうけれど、ほどなくして引越しが決まり、私は母とともにその町を去った。
けれど、あれから数年がたち、私は再びその町へ戻ることになったの。
理由は、母を亡くした後に選んだ進学先が、その町にあったから…そう、私には縁のないと思っていたあのお嬢さま学校。
そこの学生寮へ入った翌日、私は一人出かけた。
向かった先は、数年前には毎日通っていた、あの神社。
「ここは、変わっていないわね…」
久し振りに足を踏み入れたその場所は、季節が春で桜の木がつぼみをつけていたことを除けば、あの頃と変わっていなかった。
静寂に包まれた、誰もいない空間…。
「…これでもう、諦めがついたでしょう?」
痛む心にそう言い聞かせる。
まだどこかで会えるのでは、という気持ち…それを捨てるために、ここへきたの。
「さようなら、私の大切な人…」
もう二度と、恋をすることなんて…大切な人を作ることなんて、ないでしょう。
-fin-
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