席についた私たちに店員さんが注文を取りにきますから、それをお願いして。
「片桐さんは何の何のお仕事でこちらにきてるんです?」
 片桐さんは朝ごはんをほとんど終えているご様子で、そんな彼女に夏梛ちゃんが話しかけます。
「アニメの収録…夏休みなのに仕事が結構あってめんどくさいけど、普段は学校あるし仕方ないわよね」
 片桐さんは高校生ですし、やっぱりそのあたり大変そうです。
「それより…さっきもお礼言ったけど、この間はありがとう。でも、あんな立派な別荘だとは思ってなかったけど、私たちが借りてもよかったの?」
「あ、はい、全然大丈夫です。あの別荘は一応私のものということになっていますし、使いたいときはいつでもおっしゃってくださいね」
 そうお返事をすると、片桐さん、それに夏梛ちゃんまで少し固まっちゃいます?
「…あ、あの? 私、何かおかしなこと言っちゃいましたか?」
「ううん、別に…ただ麻美さんってお嬢さまなのね、って感じただけ」「ですです、ちょっとちょっと別世界に感じられます…」
 戸惑う私にお二人ともそんなこと言ってきちゃって…?
「そ、そんな、私なんて別に…別荘とかだって、自分の力で持ったものじゃないですし…」
 そのために夏梛ちゃんにあんな風に感じられてしまうとさみしくなっちゃいます…。
「あ、あの、それよりも、別荘では山城さんとごゆっくりできましたか?」
 話をそらせるために私からそんなことをたずねてみます。
「ええ、結構快適だったわよ。まぁ、センパイはああいう人だからずっとのんびり、ってわけにはいかなかったけどね」
 山城さんとは少なからずお話ししていますけれど、活発でじっとしているのはお好きじゃなさそう、ですものね…。
「すみれセンパイと二人でそんなそんなところで過ごされたりして、お二人ともとってもとっても仲がいいですね」「うん、夏梛ちゃん…私たちも負けていられないね」
「いや、そこは別に勝つつもりないけど…貴女たち、私とセンパイがどういう関係なのか、知ってたの?」
 あ、そういえば片桐さんからは直接は聞いていませんでしたっけ…きちんとお話しするのもこれがはじめて、というくらいですから。
「あっ、はい、一応一応すみれセンパイから聞きましたから」
「ふぅん…ま、別にいいんだけど」
「えとえと、それでそれでお二人はどうしてそんなそんな関係になれたんです? ちょっとちょっと気になりますし、聞かせてください」
「嫌よそんなの、めんどくさい。聞きたかったらセンパイに聞けば?」
 とってもクールな対応なうえに山城さんからなら、とおっしゃっているあたり、恥ずかしがっているわけではなさそうです。
「…じゃ、私はそろそろ行くから。仕事もあるし…めんどくさいけど」
「あっ、はい、ではではいってらっしゃいです」「お、お疲れさまです…」
 片桐さんは席を立って行ってしまわれました。
「…でもでも、お二人がどうしてどうしてあんな関係になったかなんて、見ていればある程度解りますけどね」
 その片桐さんを見送りながら夏梛ちゃんがそんなことを言います?
「えっ、そ、そうかな? 私には全然解らなかったけど…」
「それは仕方仕方ありません。麻美はとってもとっても鈍い上にまわりのことを見てませんから」
「はぅ…」
 完全にそのとおりですから何も言い返せません。
「え、えっと、じゃあどうして夏梛ちゃんには解ったの…?」
「だってだって、すみれセンパイって里緒菜さんのことずっとずっと、それにとってもとっても気にかけてましたから」
 う〜ん、そう言われますと…そう、でしたかもしれません?
 いずれにしましても、別荘でもご一緒に楽しく過ごせたみたいですし、これからも末永くお幸せでいていただきたいものですよね。


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