「え、えとえと、私、似合ってなくないです…?」
「そんなことないよ、とってもよく似合ってる…かわいいっ」
「…むぎゅぎゅっ!」
 初詣に行くために、さっそくあらかじめ用意していた晴れ着に着替えます。
 炬燵の外はやっぱり寒いですけれど、それを吹き飛ばすほど幸せなことがありますから大丈夫。
 それはもちろん夏梛ちゃんの晴れ着姿で…ちょっと恥ずかしそうにする彼女を見て我慢できなくなっちゃいました。
「あぅあぅ、あ、麻美ったら、もう着付けは終わった終わったんですっ?」
 いけません、私はもう着替え終わっていますけれども夏梛ちゃんの着付けはまだ私がしてあげている途中で…しっかり着付けしてあげないといけませんし、ゆっくりと身体を離して作業へ戻ります。
「うん、あとはここを…できた。サイズもぴったりでよかった」
「あ、ありがとうございます。麻美は着物の着付けも完璧ですごいすごいです」
「ううん、そんなこと…でも、こうして夏梛ちゃんに着付けができるのは、やっぱり嬉しいな」
 私たちの初ライブのときも浴衣を着せてあげましたっけ…やっぱり彼女を着せ替えするのは幸せです。
「う〜んう〜ん、でもでも…やっぱりやっぱり、私にはあんまりあんまり似合ってない気がします。麻美はとってもとってもよく似合ってて素敵素敵ですけど…あぅあぅ」
 鏡で着替え終わった自分の姿を見ながら夏梛ちゃんはそんなこと言って最後は顔を赤くしちゃいます。
「もう、そんなこと…普段のゴスいおよーふく姿もとってもかわいいけど、こういう服装の夏梛ちゃんもとってもかわいいよ」
 本当はゴスいおよーふく要素も入れたものを用意しようかな、とも考えたんですけど、お正月なんですしちゃんとしたものにしたわけでした…やっぱりこれはこれでいいものです。
「そ、そうですか…? まぁ、麻美がそう言うんでしたらいいんですけど…それにしても、本当本当にサイズがぴったりぴったりです。これ、麻美が用意用意してくれたんですよね?」
「うん、もちろん」
「クリスマスプレゼントもそうでしたけど、麻美が用意用意してくれるもの、いつもいつもサイズがぴったりぴったりです。そんなしっかりしっかり教えてましたっけ?」
「ううん、でも見れば解るから」
「えっ、それってそれってどういうことです?」
「だから、夏梛ちゃんのことは何でも、見れば解るってこと」
「なっ、何です何ですそれ、怖い怖いんですけど」
 夏梛ちゃん、ちょっとわざとらしく身震いしちゃいました。
「もう、そんな細かいこと気にしないで、はやく行こっ?」
「細かい細かいことじゃない気もするんですけど…」
 そんなことを言いながらも、あの子はそれ以上それについて何か言ってくることなく外出の準備をしはじめました。
 でも、あんなこと言ってくる夏梛ちゃんも私の、特に考えていることは何でもお見通しな感じなんですよね…そこは私が解りやすいから、だけかもですけれども。


    (第1章・完/第2章へ)

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