「そっか、二人でジョギングはじめたんだ…うんうん、いいことだと思うよ」
 その日の夜、今日も事務所のダンスルームで練習をしていらっしゃる山城センパイと里緒菜さんのお二人を私と夏梛ちゃんとでお手伝いするのですけれど、その合間で今日あったことを話したところそんな反応が返ってきました。
「今はお昼でも走るのにいい日和だし、走ってて気持ちよかったでしょ」
「え、えと…」
 いかにも運動が得意で体力もある、といった山城センパイと私ではやっぱり感じかたが全然違うみたいで、言葉を詰まらせてしまいます。
「そんな風に感じるのはここではセンパイくらいです。麻美さんも走るのなんて面倒くさいだけよね」
「え、えと…」
 今度は里緒菜さんがそんなことを言ってきましたけれど、それも極端すぎる様な気がしてやっぱり言葉を詰まらせてしまいます。
「麻美…私と走るの、面倒面倒だったんですか?」
「そっ、そんなことないよ…!」
 そして夏梛ちゃんは私をじぃ〜っと見つめてそんなことを言ってきますからあたふたしてしまいました。
「うんうん、そうだよね、大好きな人と一緒に走って楽しくないわけないよ。ねっ、里緒菜ちゃん…」
「…センパイの早朝ランニングには絶対に付き合いませんからね?」
「うっ、よく私の言いたいこと解ったね…」
「そんなの解るに決まってます。ただでさえ走るのは面倒なのに、さらに早朝とか絶対にあり得ませんから」
「そんなぁ…ぶぅぶぅ!」
 お二人のやり取りは何だか微笑ましく感じられてしまうのですけれど、山城センパイは早朝に走っていらっしゃるのですか…さすがといいますか、何だかかのかたでしたらそんなことをしていても自然に感じられます。
 私もそのくらいしたほうがいいのかも…体力をつけないといけないのは間違いありませんし、ただ走るために毎回夏梛ちゃんに付き合ってもらう、というのも悪いですから…。
「…まぁ、麻美は自分の自分のペースでいけばいいと思います。それにそれに、私もできるだけ一緒に一緒に走りますから…これは、私がそうしたいって思っているからするだけで、麻美は変な変なことは考えなくっていいんですからね?」
 と、お二人のやり取りを見守りながら夏梛ちゃんがそんなことを言ってきます?
 はぅっ、また心の中を読まれちゃったみたいですけど…うん、そうですよね、私たちは恋人なんですし、夏梛ちゃんもなるべく私と一緒にいたい、私と一緒のことをしたいって、思ってくれているんですよね。
「うん、夏梛ちゃん…ありがとっ」
「…むぎゅっ! あぅあぅ、あ、麻美ったら…!」
 何だかとっても嬉しくなってきちゃって、思わず彼女をぎゅって抱きしめちゃいました。
 もう、本当、夏梛ちゃん、大好き…。
「ふふっ、やっぱり二人は幸せいっぱいみたいだねっ」「…全く、やっぱりバカップルね」
 と、言い合いをしていたお二人が私たちへ生暖かい視線を向けてきていて…私は慌てて夏梛ちゃんから離れたのでした。


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