昨日の神社に続いて偶然の再会があって驚かされた喫茶店…アルバイトで店員さんをしているという子の給仕でお茶をさせていただいて、そして彼女に見送られてそこを後にしました。
 結局またお名前を聞くのは忘れてしまいましたけれど、ともかく外へ出ますと少しのんびりしたこともあって日も傾いてきていました…ですので、そろそろ帰ることにします。
「今日は案内案内、ありがとうございました。麻美の通って通っていた学校を見ることができましたし、麻美の学生時代のお話も聞けましたし、とってもとっても楽しかったです」
 また手を繋いで歩きはじめた私たちですけれど、夏梛ちゃんがそんなことを言ってきました。
「ううん、そんな、こちらこそ…きてくれてありがと、夏梛ちゃん」
 大好きな人に、自分が長く過ごした場所を見てもらえた…うん、やっぱりお礼を言うのは私のほうです。
「でも…昔の私については、やっぱり恥ずかしかったかも」
「全く全く、まだ気にしているんです? お昼にも言いましたけど、昔がどうでも…」
「…これからは夏梛ちゃんがずっと一緒にいてくれるからさみしくなんてない?」
「で、ですです…もうもうっ」
 うふふっ、真っ赤になったりして、かわいいんですから。
「そ、それにそれに、麻美は自分の学生時代は目立たなかったとか、お友達とかいなかったとか言いますけど…」
「あっ、そこにいるのって…石川先輩、よね? お久し振り〜」
 と、夏梛ちゃんが言葉を続けようとしたそのとき、少し離れたところから私を呼ぶ声が届きました?
 視線を向けると、一軒のお店から出てきた女の人が笑顔でこちらへ手を振っていました。
「あのときは学生寮まで案内してくれてありがとっ。あれから全然会えなかったけど、先日のライブ観たわ…これからも、応援してるわねっ」
 その人はそう言って会釈してきますから、私たちも軽く会釈をしてそのまま歩いていきます。
「…ほらほら、あんなものすごく目立つ目立つ人ともお知り合いなんですし、麻美って結構結構知り合い多い多いと思いますよ?」
 視線を戻しながらそう言う夏梛ちゃんなんですけど…今のかた、どなたでしたっけ。
 長くてふわふわのきれいな金髪に碧眼、スタイルも抜群なとっても大人っぽい美人さんでものすごく目を惹く、明らかに日本人ではないかたでしたけれど、私にそんなお知り合いは…いえ、今の人、学生寮へ案内、と言ってましたよね。
 そういえば、そういう、道に迷った編入生を案内してあげたこともありましたっけ…そう、それが彼女で二つ年下の雪野真綾さんとおっしゃられましたけれど、でもお会いしたのはその一度だけでしたし、お知り合いということにはなる、のでしょうか?
「それにそれに、皆さんいい人ばかりでしたし、そんな皆さんやここの環境があったから、今の麻美があるんですね」
「うん…それはそう、かも」
 確かに、今日再会できました皆さんがいなければ、今の私…声優になり、夏梛ちゃんと一緒にいる私の姿はなかったと思います。
 そう思うと、皆さんと出会えたこと…改めて感謝したくなります。
「夏梛ちゃん、またいつかこうしてここへ…一緒に、きてくれる?」
「はい、もちろんもちろんです…また、一緒に一緒にきましょう」
 そして、私がこれから歩む未来…それは、夏梛ちゃんがいなければ考えられません。
「うん、夏梛ちゃん…大好きっ」
 愛しい彼女とぎゅっと腕を組んで、私の母校…私立明翠女学園を後にしたのでした。


    (第3章・完/第4章へ)

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