そういうことで、今日は夏梛ちゃんに連れられて私のおよーふくを選ぶことになったのでした。
「えっと、それで、今からどんなところへ行くの?」
 夏梛ちゃんが私のことを想ってしてくれることですからもう抵抗などはしないことにしまして、そうたずねてみます。
「はい、今日は私の行きつけのお店へ行きます」
 それに、そうしてまた彼女のことを知ることができる、というのは嬉しいものですし。
「…って、あれっ? 夏梛ちゃんの行きつけ、っていうことは…」
「麻美? どうかどうかしましたか?」
「あっ、ううん、何でもないよ?」
「そうです? でしたらでしたらいいんですけど…もうすぐもうすぐ着きますよ」
「う、うん、夏梛ちゃん」
 ちょっとした予感を覚えたんですけど…大丈夫でしょうか。

「ここがここが私の行きつけのお店です。さっそくさっそく、麻美に似合いそうなものを探して探してみましょう」
 閑静な住宅地の一角、落ち着いたたたずまいのお店が夏梛ちゃんの目的地で、そこへ入ると彼女はそう行ってきます。
「わっ、か、夏梛ちゃん、待って…!」
 でも、対する私はそんな彼女を止めちゃいます。
「もうもう、麻美ったら何です何です?」
「う、うん、このお店のおよーふく、私なんかには似合わないって思うんだけど…」
 夏梛ちゃんの行きつけ、という時点で予想できたことなんですけど、このお店はゴスいおよーふく…彼女が着てるみたいなもののお店だったんです。
「もうもう、何を何を言うかと思えば…」
「だ、だって、本当のことだよ? こういうおよーふくは夏梛ちゃんみたいな子が着るから似合うわけで、私なんかが着ても…」
「もうもうっ、麻美は『なんか』なんかじゃないですっ」
 私は本当にそう思うんですけど、夏梛ちゃんはそんな声をあげてしまいました。
「それにそれに、麻美は本当本当にとってもとってもかわいいかわいいんですから…あぅあぅ」
 強い口調の彼女でしたけれど、最後は赤くなっちゃいました。
「夏梛ちゃん…」
「と、とにかくとにかく、私が麻美に似合うって思って思ってるんです。麻美はそんな私のこと、信じて信じてくれないんです…?」
「…はぅっ」
 あんなこと言われながら上目遣いに見られちゃったら…もう言い返すことなんてできません。
「う、ううん、夏梛ちゃんがそこまで言うなら…」
「よかったよかったです。第一第一、お仕事で結構結構色んな格好してると思うんですけど」
「えっと、それはあくまでお仕事だから…」
 プライベートで着るもの、となるとちょっと話は違ってきますよね。
 それに、アイドルな衣装なども夏梛ちゃんにはとってもよく似合っていますけれど、私にはどうかってなると…。
「じぃ〜…じぃ〜っ」
「あ、えと…じゃ、じゃあ、夏梛ちゃんに、お任せしてみるね?」
 あの子の強い視線を受けて、さすがに言葉を濁しちゃいました。
「ですです、任せて任せてください」
 でも、張り切る夏梛ちゃんもとってもかわいいから別にいいかな、って思えます…とはいえ、お店の中ですからさすがにぎゅってするのは我慢をしましたけれども。

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