「わ…か、夏梛、ちゃん…」
 着替えてスタジオへ戻ってきた私でしたけれど、入ってすぐに固まっちゃいました。
 それは、先に戻ってきていた夏梛ちゃんの姿が目に留まったから…。
「麻美ったら、どうしたんどうしたんで…す…?」
 そんな私に気づいてこちらを見る夏梛ちゃんも固まっちゃいました?
 あぅ、いつもの夏梛ちゃんももちろんとってもかわいいんですけど、こういう格好の彼女も…あっ。
「か、夏梛ちゃん、ど、どうしたの…?」
 私だけじゃなくって彼女も固まっちゃってることに気づいて、我にかえるとともに不安になってきちゃいました。
「あ、え、えとえと…あ、麻美こそ、どうしたんです?」
「う、うん、私は、夏梛ちゃんがあまりにもかわいかったから、見とれちゃって…」
「な、なな、何を何を言っているんですっ? 麻美のほうが、もっともっとかわいいかわいいのに!」
「…えっ?」
 顔を真っ赤にしての彼女の言葉に、私はまた固まっちゃいました。
 だって、今…あり得ないことを言われた気がしちゃいましたから。
「あ、あの、夏梛ちゃん…今、何て…?」
「な、何でも何でもありませんっ。麻美のメイド服姿がかわいいかわいいとか、そんなこと全然全然思ったりしてないんですからっ」
 夏梛ちゃん、今度はぷいってしちゃいましたけれど…今の私の服装は彼女が口にした様なものになっていて、そして彼女もお揃いのものを着ています。
 普段のゴスいおよーふく姿とはまた違った雰囲気の彼女はやっぱりとってもかわいくって、それで見とれちゃったわけなんですけど…。
「そ、そうですよね、私なんかにこんなかわいらしい服装、似合うわけないですよね…」
 解っていたこととはいえ、少ししゅんとしてしまいます。
「だ、誰も誰もそんなそんなこと言ってませんっ。麻美のその格好、とってもとっ…こ、こほんっ、わ、悪く悪くないですよ?」
 あっ、いけません、夏梛ちゃんが気を遣ってくださってます。
「う、うん、ごめんね、夏梛ちゃん。私なんかのことより、夏梛ちゃんのメイドさん姿、とってもかわいいし似合ってるよ」
「謝る謝ることもないですし、なんかなんてことも…とにかくとにかく、ありがとうございます」
 ちょっと照れちゃったみたいに顔を赤くしたりして、ますますかわいいです。
「うん、こんなアニメとかゲームとかの世界でしか見ない様な服装だけど、夏梛ちゃんが着るとそれ以上だよね」
「もうもう、麻美こそ…え、えとえと、でもでも麻美はお嬢さまみたいですし、普通に普通にメイドさんとかいなかったんです?」
「わっ、もう、私はそんなのじゃないし、メイドさんもいないよ?」
「そういうそういうものでしょうか…」
 どうなんでしょう、あの学校の他の生徒さんにはそういう子もいたかもしれませんけれど…少なくとも私の家にはもっと普通の服装をした家政婦さんしかいませんでした。
「あら、まぁ、お二人ともやっぱり仲がいいですね〜」
 と、その場にはもちろん如月さんもいらして、私たちのそんなやり取りを微笑ましげに見ていました。
「あぅあぅ、そのその…お仕事のこと忘れて忘れてお話ししてたりしてごめんなさいです…!」「その、申し訳ありません…」
「あら、まぁ、大丈夫ですよ? もう少しでスタッフのかたもきますし、そうしたらよろしくお願いしますね〜」
 慌てて謝る私たちに如月さんはにこやかにそうおっしゃってくださいました。
 あぅ、いけません、夏梛ちゃんのあまりにかわいらしい姿に浮かれちゃっていました…しっかりしなきゃ。

 写真撮影ではメイドさんな服の他にもあのゲームの作中に出てくる学校の制服など色々な格好をしました。
 私なんかに似合っているのか、ってなりますと怪しいところながら夏梛ちゃんはとってもかわいくって、お仕事だとはいえそんな彼女を見られてとっても幸せ。
 それで気持ちも軽くなったのか、プロモーションビデオのほうも何とか無事に収録できたのでした。


    -fin-

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