アサミーナとかなさまとお正月
「今年最後のお仕事、お疲れ様でした、麻美?」
「うん、夏梛ちゃんこそお疲れ様」
―今年最後のものとなる夕暮れの中、もうスタッフさんなどしか残っていないイベント会場を二人で眺めながら、そんな声をかけ合います。
今日はこの大きなイベント会場の一角で、私と夏梛ちゃんのデビュー作でしたゲームのミニイベントがあって、私たちはそれに参加したんです。
今年最後のお仕事、というのは言うまでもないですよね…今日は大晦日ですから。
「それにしても、相変わらずすごい人の数だったね」
お昼の光景を思い出してそう言います…このイベントには夏にもきたのですけれど、本当にテレビの中ででも見たことのないほどたくさんの人がきていたんです。
「あんなのまだまだ甘い甘いですよ? メインの場所になると、もっともっとたくさんの人でごった返してるんですから」
「そ、そうなんだ…」
ちょっと想像できないかも…少なくても、お客さん側としてはとても参加できそうにありません。
「でも、このイベントのこと、まだよく解らないかも…。私たちの参加してる様な企業のイベントはあくまでおまけで、メインは個人の描いたコミックとかの即売会なんだよね…それであんなに人が集まるなんて、やっぱり不思議…」
「まぁ、年に二度のお祭りって面が大きい大きいかも…麻美は、売っているものに興味興味あるんですか?」
「う〜ん、どうかな…アニメやゲームは好きだけど、コミックはほとんど読まないし…」
うん、よほど百合な作品があったら読むくらい、かな?
「そうですか…そうですね、ここはあまり麻美には深く深く知る必要のない世界の気がします」
「えっ、それってどういう意味?」
「麻美には今の今のままでいてもらいたい…って、はわはわ」
夏梛ちゃん、途中で言葉を詰まらせて顔を赤くしちゃいましたけど…もう、私は何に興味を持ったとしても、一番は決まってるのに。
「…夏梛ちゃん、大好きだよ?」
「はぅはぅ、い、いきなり何言って…!」
もう、相変わらず夏梛ちゃんはかわいいんだから…。
「まぁ、お二人とも、そろそろ出発しますよ〜」
思わず彼女を抱きしめそうになった瞬間、後ろからそんな声が…振り向くと、マネージャの如月さんがいらっしゃいました。
あっ、いけません、無理を言ってお願いしたのですし、急がないと。
「それじゃ夏梛ちゃん、行こ?」
「そ、そうですね、麻美」
私たちは手をつないでその場を後にしたのでした。
如月さんに連れられてイベント会場を後にした私たち…数時間後、もうすっかり夜になった頃には新幹線に乗っていました。
イベントのかたがたとの打ち上げも計画されていたのですけれど、ちょっとお願いして、イベント最終日のすぐ後に帰ることに…皆さん私たちの関係をご存知ということもあり、微笑ましげに見送ってくださいました。
イベントでの疲れもあって、それにこれからに備えてということもあり、車内では私も夏梛ちゃんも仮眠を取っていて気がついたらもう最寄り駅に到着していまして、そこから私の暮らすマンションまでは如月さんの運転する車で送っていっていただけました。
「それではお二人とも、よいお年を…来年も、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、今年はお世話になりました」「来年もよろしくお願いいたします」
マンション前で車から降りた私たち、如月さんとそんな言葉を交わして別れ、一緒に自分のお部屋へ向かいます。
「ただいま、夏梛ちゃん」「えっと、ただいま、麻美…?」
お部屋へ戻ってきたところでそんな言葉を交わしあいます…うふふっ、だって、私たちはここで一緒に暮らしているんだもの。
夏梛ちゃんと一緒に暮らしているなんて、今思っても夢みたい…。
「って、もうもう、麻美ったら何をぼ〜っとしてるんですか…時間がありませんよ?」
「あっ、そ、そうだったよね…じゃあ、さっそく私が着付けをしてあげるね?」
「は、はぅはぅ、お、お願いします…」
お部屋へ戻ってきた私たち、のんびりする間もなく着替えをすることにします。
本当は少しくらいのんびりしたい気持ちもあるんですけど…しょうがないよね。
それに、夏梛ちゃんの着付けをしてあげられるだけで、とっても幸せ…。
深夜…ラジオのない日ならもう眠りはじめている時間に、私たちはマンションを後にして外出です。
もちろん、二人とも着物へ着替えているんですけど…。
「はぅ、夏梛ちゃんの着物姿、やっぱりとってもかわいい…」
手をつないで歩いていますけれど、そのままぎゅってしたくなる衝動を抑えるのが大変です…ううん、お部屋の中でしちゃいましたけれども。
夏に浴衣姿は見ましたけれど、こちらもとっても素敵…うんうん、ちゃんと着物を用意してよかった。
「はぅはぅ、あ、麻美こそ、とってもとってもきれいなのに…!」
「わっ、そ、そうかな?」
「そ、そうですそうです、ただでさえ麻美は和服の似合う雰囲気を出しているんですから…!」
「わわ…ありがと、夏梛ちゃん」
お互いに顔を赤くしてしまいましたけれど、幸せな気持ちです。
でも、私ってそんな雰囲気があるのかな…それなら、夏梛ちゃんがゴスいおよーふくでライブに出るのと同じ様に、私も着物にしてみるのもいいのかも。
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